こんにちは。鹿背山城プロジェクトチームのKです。
昨年の話になりますが、論文雑誌『歴史評論』の2015年11月号に「城郭研究の現在」というタイトルで「杉山城問題」を扱った論文が掲載されていることを知り、取り寄せて読んでみました。筆者は竹井英文さんという戦国・織豊期の政治史を専門にする研究者で、関東を中心に城郭研究者としても著名な方の様です。
「杉山城問題」を極簡単に説明すると「埼玉県にある杉山城の現存遺構は、地表面観察を元にした縄張り研究によって戦国時代後期に北条氏が築城した城の姿であると考えられてきたが、2002年以降の発掘調査の成果から導かれた遺構の年代は、縄張り研究の成果と約半世紀のズレがあり、築城者も山内上杉氏(関東管領家)に関わる勢力である可能性が高いと評価された。」という問題、或いはこの「杉山城での縄張り研究と考古学による城郭の年代や築城主体の評価のズレ」に端を発した城郭研究に関わる各分野間の論争のことです。
会員諸兄は既にご承知の通り、鹿背山城でも「『昨年度までの6次に渡る発掘調査の成果から考古学的に導かれた鹿背山城が機能した年代』と、『従来から縄張り研究によって通説となっていた遺構の最終年代』が一致しない。」ことが昨年の「鹿背山城なんでも知ろう連続講座」で森嶋康夫さんによって指摘され、いわば「鹿背山城問題」に直面することになりました。
先に紹介した論文で竹井さんは、城郭研究に関して縄張り研究、考古学、文献史学それぞれが抱える諸問題を列挙され、「杉山城問題」とそれをとりまく学界の動向を公平な視点から概説されており、当然、同様の問題を抱える鹿背山城について私たちが学ぶ際にも参考になると思いましたのでお薦め致します。※「杉山城問題」に関する上記の説明は私(K)の知識と理解の範囲内で極簡単に記述しましたので、誤解のある恐れがありますので、つきましては、詳しく正しくご理解頂くためにも、竹井さんの論文やそこで紹介されている先行論文等をご参照下さい。
※「歴史評論」2015年11月号の入手・閲覧方法は、 発行者である一般財団法人 歴史科学協議会 の公式サイトでご確認ください。一般財団法人 歴史科学協議会 の公式サイト⇒ http://www.maroon.dti.ne.jp/rekikakyo/
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